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最終更新:2026年10月11日

算数を得意にする方法|数の感覚・計算の練習・算数への不安の研究

小1・小2の算数プリントでは、同じ答えでも、数の大きさを捉えて解いたのか、覚えた手順を使ったのかは違います。Schneider(2018)がまとめた数直線の正確さと算数の成績の相関はr = .443ですが、その数字だけで練習の効果は決まりません。買い物で数量を比べるときや、プリントの計算で手が止まるときに、今の土台を確かめる視点を考えます。研究からは、数の理解・計算の習熟・算数への不安を分けて確かめ、今の子どもがつまずく部分に合わせて練習を選ぶことが妥当と考えられます。

この記事の要点
  • 入学前後の算数力は後の学力と関係しますが、早期の先取り学習の効果を直接示す結果ではありません。
  • 数直線を正確に捉える子は算数力も高い傾向がありますが、数直線の訓練で算数が伸びるかは研究によって異なります。
  • 計算練習で直後の基礎計算が伸びても、文章題や長期の成績まで同じ効果が続くとは限りません。
  • 算数不安と成績には負の関係がありますが、子どもや保護者の不安だけを原因にしないことが大切です。
  • 家庭では正誤に加え、数の捉え方、手助けの内容、取り組むときの負担を確かめます。

算数を得意にする方法|数の感覚・計算の練習・算数への不安の研究

小1・小2の算数プリントでは、同じ答えでも、数の大きさを捉えて解いたのか、覚えた手順を使ったのかは違います。Schneider(2018)がまとめた数直線の正確さと算数の成績の相関はr = .443ですが、その数字だけで練習の効果は決まりません。買い物で数量を比べるときや、プリントの計算で手が止まるときに、今の土台を確かめる視点を考えます。研究からは、数の理解・計算の習熟・算数への不安を分けて確かめ、今の子どもがつまずく部分に合わせて練習を選ぶことが妥当と考えられます。

早い時期の算数力と後の成績には関係がありますが、早く難しい内容へ進めば将来も有利だと決まったわけではありません。数直線の練習も計算教材も、何が伸びたか、何と比べたか、いつ測ったかによって評価が変わります。ここでは低学年までの土台を中心に、海外の研究で見えた可能性と限界を読み、家庭で無理なく観察できることへつなげます。得意・不得意という呼び名を急いで決めるより、できることと助けが要ることを具体的に見ていきます。

要点

  • 入学前後の算数力は後の学力と関係しますが、早期の先取り学習の効果を直接示す結果ではありません。
  • 数直線を正確に捉える子は算数力も高い傾向がありますが、数直線の訓練で算数が伸びるかは研究によって異なります。
  • 計算練習で直後の基礎計算が伸びても、文章題や長期の成績まで同じ効果が続くとは限りません。
  • 算数不安と成績には負の関係がありますが、子どもや保護者の不安だけを原因にしないことが大切です。
  • 家庭では正誤に加え、数の捉え方、手助けの内容、取り組むときの負担を確かめます。

早い時期の算数力は「予測」であって進路の決定ではありません

「小さいうちに算数を得意にしておきたい」という考えには、研究と重なる部分があります。Duncan(2007)は、入学時の力と後の学力を追った研究をまとめ、初期の算数、読み、注意に関わる力が後の成績を予測すると報告しました。その中でも算数の予測力が大きかったという結果です。ただし、比べているのは子どもの初期の力と後の成績の結びつきであり、先取りをした組としなかった組に分けた実験ではありません。

Watts(2014)でも、就学前の算数力は、読みや家庭の特徴などを考慮した後も、青年期の数学の成績と関係していました。さらに、幼い時期から入学後にかけて算数力が伸びたことも、その後の成績の予測に役立ちました。調査開始時の得意さだけで子どもを分類するより、学びながら変わる部分にも目を向けたい結果です。

ここでいう相関は、ある特徴が高いほど別の特徴も高い、または低いという関係です。関係があっても、片方を変えればもう片方が変わるという因果まではわかりません。家庭での経験や学校で学ぶ内容など、測り切れていない事情が両方に関わっている可能性もあります。研究を理由に開始年齢を競ったり、まだ数に親しんでいない子の将来を狭く見積もったりする読み方には無理があります。

低学年の家庭で確認したいのは、先の単元を知っているかだけではありません。物を順に数えた後に全部でいくつかを捉えられるか、数字を見て量の違いを思い浮かべられるか、といった様子も観察の候補になります。これは研究が定めた合格基準ではなく、困っている場所を学校の先生と共有するための見方です。初期の算数力に注目することと、幼いうちに学力の評価を固定することは分けて考えます。

数直線は数の感覚を見る手掛かりになります

数の感覚という言葉は広いため、研究が何を測ったかを確認する必要があります。ここで扱う数直線の推定は、数を表す線の上で、指定された数がどの辺りに位置するかを判断する課題です。数字を唱えるだけでなく、数どうしの距離や大きさの関係を捉える面があります。ただし、この課題の成績だけで算数の力全体が測れるわけではありません。

Schneider(2018)のメタ分析(複数の研究結果をまとめて検討する方法)では、数直線の推定と算数力の相関は r = .443 でした。対象者は 10,576 人で、各標本の平均年齢は 4〜14 歳にわたります。r は結びつきの向きと強さを示す相関係数で、この結果は推定が正確な子ほど算数力も高い傾向を表します。

この結びつきは、数える力、計算、学校での成績といった測り方を変えても見られたと報告されています。一方、Schneider(2018)で年齢とともに関係が強くなった背景には、整数より分数で相関が高いことがありました。したがって、年齢の違う子が同じ課題で同じ伸び方をするという意味にはなりません。低学年の整数の理解に、そのまま分数を含む結果全体を当てはめない注意が必要です。

家庭で数直線を使うなら、正しい位置をすぐ教える前に、子どもが何を目印にしたかを見ることができます。端から数えているのか、真ん中を考えているのか、数字の並びだけで決めているのかによって、確かめたい内容が変わります。言葉で答えにくい子には、指で示したり物を置いたりする形でもかまいません。

数直線の訓練は、比べる相手まで読むと評価がわかれます

「算数が得意な子は数直線が正確」と「数直線を練習すると算数が得意になる」は、別の問いです。後者を調べるには、訓練した組と別の条件の組を比べる必要があります。その際、何も追加しない組より良かったのか、別の活動をした組より良かったのかでも意味が異なります。教材を選ぶときも、効果があったという見出しだけでは判断できません。

Maertens(2016)は、就学前の子どもを無作為に、数の比較、数直線の推定、それ以外の活動、追加の訓練をしない条件へ分けました。数の比較と数直線の訓練は、対照条件に対して算数に良い効果を示したと報告されています。ただし、練習した課題から別の課題への転移(身に付けた力が別の場面でも使えること)は見られませんでした。

一方、Friso-van den Bos(2018)の幼稚園段階の研究では、数える訓練の組は対照群より算数などの伸びが大きかったものの、数直線の訓練の組は対照群との差が明確ではありませんでした。こちらも欧州の子どもの研究であり、年齢によって訓練から得るものが異なることが報告されています。研究どうしで課題や対象が違うため、違いを比較相手だけで説明することもできません。少なくとも、数直線という名前だけで安定した効果を見込むのは難しい結果です。

算数の練習への期待 数理解・計算の研究結果 比べた練習 子どもの学習段階
数の位置を練習すれば算数が伸びる Maertens(2016)では算数への効果を報告 別の活動・追加訓練なしの条件 欧州の就学前児
数直線ならどの子にも合う Friso-van den Bos(2018)では対照群との差が明確でない 対照群。数える訓練の組も設置 欧州の幼稚園段階
正確な数直線が高い算数力を生む Schneider(2018)が示したのは主に関連 推定の正確さと算数力の違い 年齢幅のある研究の参加者

この比較から家庭へ持ち帰れるのは、数直線を学習の選択肢として扱う姿勢です。課題自体がわからず苦痛になっている子には、数える活動や具体物に戻る余地を残します。練習した線上で位置を選べても、別の算数課題までできるようになったかは分けて確かめます。

計算練習は直後の伸びと後に残る力を分けて見ます

計算が滑らかになれば、算数が得意になったように感じられます。けれども、基礎計算の成績と、数を使って問題を解決する力は同じ測定ではありません。練習した内容のテストだけが上がったのか、違う問題にも力を使えたのかを確認する必要があります。タブレット教材で良い結果が出た場合も、端末を使うこと自体が理由だったとは限りません。

Hassler Hallstedt(2018)は、算数の成績が低い小学校の低学年を対象にしたタブレットの介入を調べました。算数を練習した条件をまとめて対照・プラセボ条件と比べると、直後の基礎計算の効果量は d = 0.53–0.67 でした。効果量とは、差の大きさを成績のばらつきを物差しにして表した数で、得点や正答率の増加そのものではありません。プラセボ条件は比較のための別の活動を設ける条件で、この海外の研究では基礎計算の差が見られても、算数の転移や問題解決には同様の優位が示されませんでした。

同じ Hassler Hallstedt(2018)では、追跡時の差は 6 か月後に d = 0.18–0.28、12 か月後には d = 0.03–0.13 へ小さくなりました。これは、直後と後日の結果を合わせて、効果の範囲と持続を読む必要があるという報告です。差が縮んだことを、子どもが学んだことをすべて忘れた、と読み替えることはできません。比較した組が後から伸びた可能性も含め、組どうしの差と個人の成長は分けて扱います。

Bailey(2016)も、海外の幼い子どもへの早期算数介入で、効果が薄れる過程を分析しています。訓練直後に同じ成績でも、訓練前の学力などに違いがあれば、その後の伸び方は同じとは限らないことが示唆されました。家庭では、今日の教材で速くできたかに加え、後日も理解して使えるかを見る理由になります。ただし、今回の研究から練習を続ける最適な期間や、効果を保つための決まった量までは決められません。

算数への不安を、親子どちらかの責任にしないでください

算数不安とは、算数や数学に取り組む場面で感じる緊張や心配を指します。「苦手だから不安になる」のか、「不安があるため力を出しにくい」のかは、日常の様子だけでは簡単にわかりません。課題を理解していないことと、理解していても答える場面がつらいことも分けたいところです。点数と取り組む様子を別々に見る必要があります。

Barroso(2021)のメタ分析では、算数・数学への不安と成績の相関は r = -.28 でした。不安が強い人ほど成績が低い傾向を示しますが、不安を下げたら成績がどれだけ上がるかを測った数字ではありません。数の量をおおまかに見分ける能力の測定では同様の有意な関係が見られず、算数に関する力がどれも同じ形で不安と結びつくわけでもありませんでした。

Maloney(2015)は、米国の小学校低学年で親の算数不安と子どもの学年間の変化を調べました。不安の強い親が算数の宿題を頻繁に手伝う場合には、子どもの算数の伸びが小さく、学年末の不安も強いという関連があり、手伝いが少ない場合には同じ関連は見られませんでした。後の大規模な追試では再現されなかったという報告もあります。親に手伝わせない条件を無作為に設けた実験ではないため、親の不安が子どもの成績を下げたと断定したり、家庭での援助を一律にやめたりする根拠にはできません。

逆効果を避けるためには、「得意にする」つもりの練習が親子の負担を増やしていないかを確認します。時間を急がせると黙り込む子、間違いを見られると強く嫌がる子に、速度や正答だけを繰り返し求める形は合わない可能性があります。大人も説明が難しく感じたら、わからない箇所を残して学校の先生に確かめることができます。

家庭では「何が変わったか」を小さく確かめます

家庭で研究の結果を試すときは、まず現在のつまずきを言葉にします。計算の手順を忘れるのか、数字が表す量を捉えにくいのか、それとも答える場面で緊張するのかを見ます。本人が何に困っていると感じるかも聞き、親の見立てだけで決めないようにします。ここからの手順は研究で効果が確定した訓練法ではなく、学習を選び直すための観察案です。

次に、見たいことに合う活動を選びます。数の大きさなら具体物や数直線、基礎計算なら既に学校で学んだ範囲の練習を使い、負担が増したら量ややり方を見直します。道具、難しさ、声の掛け方をまとめて変えると、何が助けになったかわかりにくくなります。子どもが取り組める条件を保ちながら、前の様子と比べます。

記録は、細かな採点表を毎回作る必要はありません。「線の真ん中を目印にできた」「物を動かすと量がわかった」「横で見ていると答えにくそうだった」など、見えたことを短く残せます。うまくいかなかった日も、練習量を増やす前に課題の理解や負担を確かめます。日々の調子の違いがあるため、たまたま良かった結果を方法の効果と決めつけない姿勢も必要です。

変化が見えにくいときは、同じ練習を続けることだけを目標にしません。学校の先生に、家での具体的な様子と学校での理解が一致するかを相談します。計算の正確さは上がっても文章題で困るなら、別の支援が要る可能性を考えます。苦手意識の強さも含めて伝えると、正誤だけでは見えなかった困り方を共有しやすくなります。

よくある質問

低学年から先取りを進めた方がよいですか

今回の研究だけでは、先取りの開始時期や速さを勧められません。Duncan(2007)や Watts(2014)が示したのは、初期の算数力やその伸びと後の成績との関係です。先の単元を多く終えれば将来の成績が高くなると比べた実験ではないため、今学んでいる数や計算をどう理解しているかを先に確かめます。新しい内容を楽しむ子にも、理解を支える時間が必要な子にも、同じ進度を求める根拠はありません。

計算教材の点数が上がれば、算数が得意になったと考えてよいですか

基礎計算ができるようになった変化として受け止められます。ただし Hassler Hallstedt(2018)では、直後の基礎計算への効果が、転移や問題解決にも同じように現れたわけではありません。教材の点数を算数全体の力とせず、学校で違う形の問題に取り組む様子や、後日も使えるかを別に見ます。計算の伸びを認めることと、ほかの領域の助けを探すことは両立します。

親自身が算数を苦手に感じる場合は、手伝わない方がよいですか

親の苦手意識だけを理由に、援助をやめる必要があるとは言えません。Maloney(2015)の結果は特定の条件で見られた関連で、親の不安を原因と確定したものではありません。教える側も焦るときは、問題を一緒に読み、わからない場所を確認する役割にとどめる方法もあります。家で説明を完結させようとせず、学校の先生に確認する内容を整理することも手助けです。

この記事の限界

算数の土台に関する資料には、米国・欧州などの就学前児・低学年の試験と、幅広い年齢・地域の統合研究が交じっています。初期の力の追跡と訓練直後の測定は別の問いで、数直線の効果も一致せず、日本の小中学生や適性検査への得点効果を直接判断する根拠は乏しいままです。

数の理解の困難や強い不安が続く場合は学校の先生や学習・心理の専門家と個別に確かめる必要があり、家庭の観察だけで原因は決められません。練習前後のプリントを並べて、自分で説明できた計算や量の関係を本人と確かめ、負担の様子も一緒に残してください。

参考文献

  1. Duncan ほか. School readiness and later achievement. Developmental Psychology. 2007;43(6):1428-1446.
  2. Watts ほか. What’s past is prologue: Relations between early mathematics knowledge and high school achievement. Educational Researcher. 2014;43(7):352-360.
  3. Schneider ほか. Associations of number line estimation with mathematical competence: A meta-analysis. Child Development. 2018;89(5):1467-1484.
  4. Maertens ほか. Enhancing arithmetic in pre-schoolers with comparison or number line estimation training: Does it matter? Learning and Instruction. 2016;46:1-11.
  5. Friso-van den Bos ほか. Counting and number line trainings in kindergarten: Effects on arithmetic performance and number sense. Frontiers in Psychology. 2018;9:975.
  6. Hassler Hallstedt ほか. Short and long-term effects of a mathematics tablet intervention for low performing second graders. Journal of Educational Psychology. 2018;110(8):1127-1148.
  7. Bailey ほか. Fadeout in an early mathematics intervention: Constraining content or preexisting differences? Developmental Psychology. 2016;52(9):1457-1469.
  8. Barroso ほか. A meta-analysis of the relation between math anxiety and math achievement. Psychological Bulletin. 2021;147(2):134-168.
  9. Maloney ほか. Intergenerational effects of parents’ math anxiety on children’s math achievement and anxiety. Psychological Science. 2015;26(9):1480-1488.

配点表を読み終えたら、次は自分の答案を一文ずつ見直す番です。

  • 向く人: 都立推薦の作文や適性検査の作文を、一文ずつ大人に直してもらいたい中学生と小学生
  • 向く人: 内申と当日点の仕組みを読んだうえで、残りの月日に何を積むかを親子で決めたい人
  • 向かない人: 立川駅の近くで、学校帰りに歩いて寄れる教室を探している人
  • 向かない人: 答案を直されるより、大人数の教室で競い合うほうが力の出る子

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よくある質問

低学年から先取りを進めた方がよいですか

今回の研究だけでは、先取りの開始時期や速さを勧められません。Duncan(2007)や Watts(2014)が示したのは、初期の算数力やその伸びと後の成績との関係です。先の単元を多く終えれば将来の成績が高くなると比べた実験ではないため、今学んでいる数や計算をどう理解しているかを先に確かめます。新しい内容を楽しむ子にも、理解を支える時間が必要な子にも、同じ進度を求める根拠はありません。

計算教材の点数が上がれば、算数が得意になったと考えてよいですか

基礎計算ができるようになった変化として受け止められます。ただし Hassler Hallstedt(2018)では、直後の基礎計算への効果が、転移や問題解決にも同じように現れたわけではありません。教材の点数を算数全体の力とせず、学校で違う形の問題に取り組む様子や、後日も使えるかを別に見ます。計算の伸びを認めることと、ほかの領域の助けを探すことは両立します。

親自身が算数を苦手に感じる場合は、手伝わない方がよいですか

親の苦手意識だけを理由に、援助をやめる必要があるとは言えません。Maloney(2015)の結果は特定の条件で見られた関連で、親の不安を原因と確定したものではありません。教える側も焦るときは、問題を一緒に読み、わからない場所を確認する役割にとどめる方法もあります。家で説明を完結させようとせず、学校の先生に確認する内容を整理することも手助けです。