- 読んだ内容を書く活動には読解を支える結果がありますが、要約だけが他の活動より優れるとは言えません。
- 教えた内容に近いテストでの伸びと、幅広い読解力の伸びは区別します。
- 解き方を増やす前に、本文の語句や話題について知らないことがないか確かめます。
- 書けない原因を、意味の理解、根拠の選択、問いへの対応に分けて観察します。
- 練習した文章だけでなく、別の文章でも理由を説明できるかを見ます。
記述問題で点を落とすのはなぜか|国語の要約・読解の練習を研究で考える
「本文は読めたのに、この記述欄が埋まらない」。都立高校入試の国語の答案を前に、そんな困り方が見えることがあります。答え合わせでは納得できても、次の文章で必要な内容を選べないなら、要約を増やすか、読み方の手順を見直すかを、答案に即して考える必要があります。記述の練習は、本文の意味を確かめて書く活動に、読み方の手順と背景知識の確認を組み合わせ、どこで止まるかを見ながら選ぶことが大切です。
読解について書く活動や要約指導には、理解を支える研究結果があります。ただし、別の書く活動と比較した場合や、広い読解力を測るテストでは、期待するほどの差が出ないこともあります。入試の配点は別の記事で扱ったため、ここでは答案を書く前の理解と、答えにまとめる練習に絞ります。添削の受け方ではなく、何を読み取り、何を書いて確かめるかが中心です。
記述の解き方を調べるときも、型を使えたことと、文章を理解できたことは分けて見たいところです。研究の平均を得点予測にせず、子どもの答案を見直すための手がかりとして読んでください。
要点
- 読んだ内容を書く活動には読解を支える結果がありますが、要約だけが他の活動より優れるとは言えません。
- 教えた内容に近いテストでの伸びと、幅広い読解力の伸びは区別します。
- 解き方を増やす前に、本文の語句や話題について知らないことがないか確かめます。
- 書けない原因を、意味の理解、根拠の選択、問いへの対応に分けて観察します。
- 練習した文章だけでなく、別の文章でも理由を説明できるかを見ます。
要約は「短くする作業」より、意味を選び直す練習です
記述対策として「要約を続けるとよい」と言われますが、短く書けたという結果だけでは、何を理解したのかわかりません。本文の言葉を並べ替えただけでも、見た目は整った文章になります。反対に、表現がぎこちなくても、筆者の主張と理由を捉えている場合があります。要約を読むときは、文字の少なさより、残した内容のつながりに目を向けます。
Graham(2011)は、複数の研究の結果をまとめて計算し直すメタ分析で、読んだ内容について書く活動が、その内容の理解を高めるという結果を報告しました。主な比較相手は、そうした書く活動を加えない通常の指導です。実施期間や活動の内容も研究ごとに異なり、家庭でどれだけ書けばよいかまでは決められません。
Stevens(2019)は、読むことに困難のある小学校中学年から高校段階の学習者への要約・主旨の指導をまとめ、平均効果0.97を報告しました。効果とは、ここでは差の大きさを点数のばらつきを物差しにして表したもので、入試得点の増加幅ではありません。比べた相手の指導内容の説明が不十分だったり変わったりしており、研究者が作った測定が中心という限界も記されています。
家庭では、要約の後に「この部分を残したのは、何を伝えるためか」を説明してもらう方法が考えられます。たとえば、具体例を残しているのに結論が抜けていれば、文章を短くする以前に、例が何を説明しているかへ戻ります。書いた量を増やす判断より先に、本人が内容を選んだ理由を確かめます。
比べる相手とテストが変わると、見える効果も変わります
「読解力が上がった」という説明では、何と比べ、何を測ったかが重要です。練習した文章に近い問題が解けることと、初めて読む文章にも対応できることは同じではありません。標準テストとは、共通の手続きや基準で、より広く力を測ろうとする検査です。研究用の課題にも役割がありますが、入試に応用できる範囲を考えるときは測定の違いを外せません。
Okkinga(2018)は、学級全体に読み方の手順を教える方略指導をまとめました。方略とは、要点を探す、内容を確かめるなど、読む際に使う方法のことです。比較条件に対する読解への効果は、標準テストでCohen’s d = .186、研究者作成テストでCohen’s d = .431でした。海外の教室を含む研究で期間や通常指導の内容もそろっておらず、手順の習得だけから一般的な読解力の大きな伸びを見込むのは慎重にしたいところです。
Hebert(2013)は、要約、質問への回答、ノート作成など、書く活動どうしを比較しました。特定の活動そのものに有利な測定を除き、読解の測定をまとめると、比較した活動間に統計的に明確な差はありませんでした。これは、偶然のばらつきだけでは説明しにくい差を確認できなかったという意味で、活動が全く同じだと確定したわけではありません。
| 読解練習への期待 | 理解について言えること | 比較した読む・書く活動 | 読み手の対象 |
|---|---|---|---|
| 書けば理解が深まる | 内容について書く活動に支持があります(Graham(2011)) | 書く活動を加えない通常指導 | 海外を中心とする学校段階の学習者 |
| 要約が最もよい | 他の書く活動との平均的な差は明確ではありません(Hebert(2013)) | 質問回答やノート作成など | 複数の学習者集団 |
| 解き方を教えれば広く伸びる | 標準テストの効果は非常に小さい結果でした(Okkinga(2018)) | 各研究の比較指導 | 学級全体で学ぶ児童生徒 |
したがって、要約が負担なら、本文への質問に短く答える活動も候補になります。ノートに理由と結論の関係を書く方法も、理解を確認する目的に合わせて選べます。活動の名前で優劣を決めず、その活動で本文のどの意味が見えるようになったかを確かめます。
説明し合うときも、手順の名前より本文の内容を見ます
読んだ内容を説明する練習では、本文を言い換えるだけで終わらない工夫が考えられます。相互教授とは、要約、質問、わからない点の明確化、先の内容の予測などを、学習者が役割を担いながら進める方法です。話す順番を決めただけの活動とは異なり、理解を確かめるための方法を学んで使います。説明役になった子が、聞き手の疑問を本文に戻って考えられるかが観察点になります。
Spörer(2009)では、ドイツの小学生がこうした方法を学び、通常の指導を受ける群と比べられました。指導後と追跡時の研究者作成課題で優れ、小集団で相互教授を練習した群は標準的な読解検査でも、指導者が導く群や通常指導の群を上回りました。ここで参照した根拠からは家庭で続ける期間を決められず、単に話し合いを増やせば同じ成果になるとも言えません。
一方、McKeown(2009)は、海外の小学生を対象に、読み方の方略を中心にした指導と、文章の内容に焦点を当てた指導などを比較しました。物語を思い出して述べる課題や説明文の学習課題では、内容に焦点を当てた群が方略の群を上回りました。差が出ない測定もあり、あらゆる課題で内容中心の指導が勝つという意味ではありません。それでも、「どの方法を使ったか」という確認が、本文の意味を考える時間に置き換わっていないかを問う材料になります。
家庭で応用するなら、「要約の手順を言って」だけでなく、「なぜ筆者はその例を出したのか」と問いかける形が考えられます。本人の説明が本文と食い違ったら、正解の言葉をすぐ言わせるのではなく、その読み方の根拠を一緒に探します。説明し合うことが負担なら、黙って読む時間を保ち、わからなかった箇所だけを示しても構いません。会話の長さではなく、前には曖昧だった内容が具体的になったかを見ます。
背景知識が足りないと、解き方だけでは補えません
文章には、その話題の語句や出来事をある程度知っていることを前提とする部分があります。背景知識とは、読む前から持っている、話題に関する知識のことです。「対比を探す」という方法を知っていても、比べられている事柄の意味がわからなければ、違いを説明しにくくなります。記述が止まったときには、答えの型だけでなく、本文の語句をどんな意味で読んだかも確認します。
Kim(2025)は、内容についての知識と理解を調べた研究をまとめ、相関r = .41を報告しました。相関は一緒に高くなる傾向を示すもので、これだけで知識が理解を高めた原因だとは決められません。同じ論文の指導を比較する研究の統合では、内容知識の指導による読解への効果はg = 0.44でした。
Peng(2024)は、読解に困難のある学習者への方略指導の研究を比較し、方法を多く教えるほど効果が強いわけではないと報告しました。また、背景知識の指導を含む場合に方略の効果が保たれたという結果でした。海外研究を中心とする統合から、特定の子に必要な知識の量や学ぶ順序までは決まりません。ここでは方略を増やすことの限界を示す根拠として読み、解き方を知識の代わりにする説明は避けます。
実際の確認では、本文に出てきた言葉を、その文章の中でどんな意味だと考えたか尋ねます。意味が曖昧なら、教科書や辞書で確かめてから同じ箇所を読み直し、理解が変わるかを見ます。ただし、知っている話題だからといって、本文に書かれていない一般知識を答案へ足すのは別の問題です。知識は本文を理解する助けとして使い、答案の根拠は本文や設問の条件に戻して確かめます。
自己説明が向かない場面と、練習を重くしすぎる危険
自己説明とは、読んでいる内容について「どういう意味か」「前の説明とどうつながるか」を自分に説明することです。声に出して文を読む音読とは違い、意味のつながりを言葉にする活動です。ただし、すでに理解している部分まで細かく説明させる方法が、どの子にも必要とは限りません。説明に時間を使ったことと、理解が変わったことを分けて確認します。
McNamara(2004)は、海外の大学生による科学的な文章の読解で、自己説明の訓練を検討しました。訓練中の自己説明は、音読との比較で、特に難しい文章の場合に理解を助けました。訓練による改善は、その分野の予備知識が少ない読み手で示され、本文に基づく問いに限られ、情報間のつながりを推論する問いでは確認されませんでした。大学生の訓練課題での結果であり、小中学生に長く説明を続けさせる根拠にはなりません。
この研究から「知識が少なくても自分で説明すれば十分」と読むこともできません。わからない語句の多い文章で説明だけを求めると、本文から離れた推測を繰り返していないか注意が必要です。これは研究がその逆効果を直接示したという主張ではなく、家庭で練習を組み立てる際の注意です。語句を確かめる、短い範囲に戻る、説明をいったん止めるといった調整を選べます。
書くこと自体に強い負担がある子には、内容の理解と書字の負担を分けて見る必要もあります。口頭では理由を説明できるのに書くと止まる場合と、口頭でも内容が曖昧な場合では、観察したい箇所が違います。家庭で原因や特性を決めつけず、答案と本人の説明を学校の先生に見てもらう材料にします。苦しさが増す練習を続けるより、何が負担だったかを記録して方法を調整することが先です。
家庭では「どこで止まったか」を残して練習を選びます
ここからは、研究を参考にした家庭での確認手順です。この組合せ自体を、日本の入試対策として効果検証したわけではありません。新しい教材を増やす前に、すでに解いた文章と答案を使い、どの段階が曖昧だったかを見ます。答えが模範解答と同じ言葉かどうかだけでなく、問いに必要な意味が入っているかを確かめます。
まず、設問が理由を求めているのか、内容の説明を求めているのかを本人の言葉で確認します。次に、答えの根拠だと考えた本文の箇所を示してもらいます。その箇所が選べなければ本文の意味へ戻り、選べるのに答えにならなければ、根拠と問いをどう結びつけるかを考えます。いきなり完成した答案を求めず、何がわかっていて何が曖昧かを見えるようにします。
確認後は、曖昧だった箇所に合う活動を選びます。話の中心を選べないなら要約、理由のつながりが曖昧なら質問への回答、語句の意味が曖昧なら調べ直して読む活動が候補です。すべてを同時に増やすと、どの活動が役立ったかわかりにくくなります。練習前の答案を残し、後で根拠の選び方や説明の変化を比べます。
さらに別の文章で同じ確認を行い、練習した答えを覚えていただけではないかを見ます。点数だけでなく、根拠を探せたこと、意味を説明できたこと、まだ手助けが必要だったことを書き留めます。部活や習い事で時間が限られる日も、長い答案を追加する以外の確かめ方を選べます。改善が見えなければ努力の不足と結びつけず、教材の難しさや必要な知識を見直します。
よくある質問
模範解答を書き写すだけでも練習になりますか
書き写しだけの効果を、ここで取り上げた研究から判断することはできません。読んだ内容について書く活動には支持がありますが、意味を考えて書くことと、文字を写すことを同一には扱えません。模範解答を使うなら、各表現が本文のどこに対応するのかを確認し、自分の答案で抜けていた内容を説明できるかを見ます。模範解答を隠した後にも、根拠を示せるかが確認点です。
毎回、文章全体を要約した方がよいですか
毎回の要約を他の活動より優先する根拠は、今回の研究にはありません。Hebert(2013)では、別の書く活動との比較で平均的な優位は明確ではありませんでした。文章全体の主旨を捉えるのが課題なら要約、ある理由を理解したいならその問いへの回答というように、目的から選べます。長く書けたかより、読めなかった内容がわかるようになったかを確かめます。
知っている話題の文章ばかり練習してもよいですか
馴染みのある話題なら取り組みやすい場合がありますが、それだけで未知の話題への読解を確認したことにはなりません。Kim(2025)が扱う背景知識の働きも、どんな文章でも同じように読めることを保証するものではありません。知らない語句を含む文章でも、意味を確かめながら読めるかを見ます。難しい話題で止まったときには、解き方の問題なのか知識の不足なのかを分けて考えます。
この記事の限界
記述と読解の資料は海外の学校教育や大学生の研究を含み、国・学年・指導期間がそろっていません。要約指導には研究者作成の測定への偏りや比較相手の説明不足があり、日本の都立入試や適性検査で得点を伸ばす方法を直接確かめた証拠はありません。
家庭の手順は観察の提案で、読む・書く負担が続く場合は実際の答案と困る場面を学校の先生や読み書きの支援に詳しい専門家に伝えてください。次の答案では本人が答えの根拠として示した箇所に線を引き、その言葉と書いた答えの対応を一緒に確かめます。
参考文献
- Graham. Writing to Read: A Meta-Analysis of the Impact of Writing and Writing Instruction on Reading. Harvard Educational Review. 2011;81(4):710-744.
- Stevens. A Review of Summarizing and Main Idea Interventions for Struggling Readers in Grades 3 Through 12: 1978–2016. Remedial and Special Education. 2019;40(3):131-149.
- Spörer. Improving students’ reading comprehension skills: Effects of strategy instruction and reciprocal teaching. Learning and Instruction. 2009;19(3):272-286.
- McNamara. SERT: Self-Explanation Reading Training. Discourse Processes. 2004;38(1):1-30.
- Peng. The Active Ingredient in Reading Comprehension Strategy Intervention for Struggling Readers: A Bayesian Network Meta-analysis. Review of Educational Research. 2024;94(2):228-267.
- Okkinga. Effectiveness of Reading-Strategy Interventions in Whole Classrooms: a Meta-Analysis. Educational Psychology Review. 2018;30(4):1215-1239.
- McKeown. Rethinking Reading Comprehension Instruction: A Comparison of Instruction for Strategies and Content Approaches. Reading Research Quarterly. 2009;44(3):218-253.
- Hebert. Comparing effects of different writing activities on reading comprehension: A meta-analysis. Reading and Writing. 2013;26(1):111-138.
- Kim. Content knowledge and comprehension: A meta-analytic review of correlational and causal associations. Psychological Bulletin. 2025;151(10):1219-1244.
配点表を読み終えたら、次は自分の答案を一文ずつ見直す番です。
- 向く人: 都立推薦の作文や適性検査の作文を、一文ずつ大人に直してもらいたい中学生と小学生
- 向く人: 内申と当日点の仕組みを読んだうえで、残りの月日に何を積むかを親子で決めたい人
- 向かない人: 立川駅の近くで、学校帰りに歩いて寄れる教室を探している人
- 向かない人: 答案を直されるより、大人数の教室で競い合うほうが力の出る子
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よくある質問
模範解答を書き写すだけでも練習になりますか
書き写しだけの効果を、ここで取り上げた研究から判断することはできません。読んだ内容について書く活動には支持がありますが、意味を考えて書くことと、文字を写すことを同一には扱えません。模範解答を使うなら、各表現が本文のどこに対応するのかを確認し、自分の答案で抜けていた内容を説明できるかを見ます。模範解答を隠した後にも、根拠を示せるかが確認点です。
毎回、文章全体を要約した方がよいですか
毎回の要約を他の活動より優先する根拠は、今回の研究にはありません。Hebert(2013)では、別の書く活動との比較で平均的な優位は明確ではありませんでした。文章全体の主旨を捉えるのが課題なら要約、ある理由を理解したいならその問いへの回答というように、目的から選べます。長く書けたかより、読めなかった内容がわかるようになったかを確かめます。
知っている話題の文章ばかり練習してもよいですか
馴染みのある話題なら取り組みやすい場合がありますが、それだけで未知の話題への読解を確認したことにはなりません。Kim(2025)が扱う背景知識の働きも、どんな文章でも同じように読めることを保証するものではありません。知らない語句を含む文章でも、意味を確かめながら読めるかを見ます。難しい話題で止まったときには、解き方の問題なのか知識の不足なのかを分けて考えます。