- 大人・友だち・自己評価・コンピュータからの情報は、作文の質を高めた研究がありますが、数値だけで添削者の順位は決められません。
- 完成した文章を直すだけでなく、書く前の組み立て方や見直し方を教える指導にも根拠があります。
- 詳しいコメントに点数やほめ言葉を足せば、さらに伸びるとは限りません。
- 表記の正しさと内容の深まりは別の成果です。片方の改善だけで作文全体の上達を判断しないようにします。
- 家庭では、直す前後の文章と、本人が説明する変更理由を残して確かめます。
適性検査の作文は誰にどう見てもらうか|添削とフィードバックの研究
「赤字は写したけれど、次はどう書けばいいの」。添削された原稿が返ってきた夕方、子どもがそう困るなら、直しの量だけでは次に残った学びが見えません。大人に見てもらう、友だちと読み合う、自分で見直すという方法を、返された情報から本人が書き直せるかという視点で比べます。添削者の肩書だけで選ぶより、文章のどこをなぜ変えるのかが伝わり、本人が書き直せる情報を返してもらうことが大切です。
ここでいうフィードバックとは、書いた内容や書き方について、次の改善に使える情報を返すことです。誤字の訂正だけでなく、理由が読み手に伝わるか、具体例が意見を支えているかを確かめるコメントも含みます。入試制度の配点は別の記事で扱ったため、ここでは作文の直し方に絞ります。以下では海外の研究を中心に、添削の効果が出た比較と、返し方によって伸びが小さくなった比較を読み分け、家庭で確かめる方法を考えます。
要点
- 大人・友だち・自己評価・コンピュータからの情報は、作文の質を高めた研究がありますが、数値だけで添削者の順位は決められません。
- 完成した文章を直すだけでなく、書く前の組み立て方や見直し方を教える指導にも根拠があります。
- 詳しいコメントに点数やほめ言葉を足せば、さらに伸びるとは限りません。
- 表記の正しさと内容の深まりは別の成果です。片方の改善だけで作文全体の上達を判断しないようにします。
- 家庭では、直す前後の文章と、本人が説明する変更理由を残して確かめます。
大人に見てもらえばよい、を研究で確かめる
「作文は自分では直せないから、大人に全部見てもらう方がよい」という考えは自然です。Graham(2015)は、小学生から中学生に相当する学年の作文について、学習の途中で評価を返す方法を調べた実験などを統合しました。このように複数の研究結果をまとめて計算し直す方法をメタ分析といいます。
Graham(2015)では、直しの情報を返さない条件との比較で、作文の質に対する平均の効果量は、大人からが0.87、友だちからが0.58、自己評価が0.62、コンピュータからが0.38でした。効果量とは、差の大きさを、成績などのばらつきを物差しにして表した数です。この数値は入試の得点や合格の可能性ではなく、研究内で測った文章の質の違いを示します。自己評価にも改善が見られたことは、大人が完成形を渡す以外にも学ぶ経路があることを示唆します。
ただし、これらは同じ子どもに同じ作文を書かせ、添削者だけを入れ替えた順位表ではありません。集めた研究ごとに課題、教え方、取り組む期間、比較条件の細部が違うため、平均の大小だけで「大人なら友だちより優れる」と結論づけることはできません。また、研究で用いたコンピュータの支援と、現在使われる生成AIによる添削を同じものとして扱うこともできません。誰が返したかに加えて、どんな情報を受け取り、子どもが何をしたかまで見る必要があります。
家庭で読み手を選ぶときは、上手な文章に書き換えられる人かどうかだけで考えないようにします。「ここで理由がわからなくなった」と場所を示し、本人の説明を聞けることも大事な役割です。家庭の外で作文を見てもらう場合も、返却された原稿から、次に本人がする作業を読み取れるかが確認点になります。指導の人数構成そのものの優劣は、この作文研究からは決められません。
添削の前に、書き方を教える余地がある
「もっと具体的に」「理由を詳しく」と書かれた原稿を前に、どこから直せばよいかわからない子もいます。指摘の意味は理解できても、具体例を探したり、意見とのつながりを説明したりする方法をまだ知らない場合です。そのときは赤字を増やすことに加えて、文章を組み立てる手順を一緒に確かめる余地があります。完成後の評価と、書けるようになるための説明を分けて考えると、必要な支援が見えやすくなります。
Graham(2023)が中等教育期を含む学年の作文指導をまとめたメタ分析では、方略指導の効果量が0.76、フィードバックが0.34でした。方略指導とは、計画する、書く、見直すといった作業の進め方を明示して教えることです。比較対象は各研究の通常の指導などであり、方略指導と添削だけを同じ条件で直接競わせた値ではありません。
それでも、書いた後の訂正だけに期待を集中させず、書くための方法を教えることを検討する根拠にはなります。たとえば家庭で試すなら、まず伝えたい意見を本人の言葉で話してもらい、それを支える経験や資料の内容を探す流れが考えられます。次に、その経験を知らない読み手にもつながりが伝わるかを確かめ、文章に戻します。
ここでいう型は、決まった言い回しをどの問題にも当てはめることではありません。書き出しが整っても、問われたことと理由が結びついていなければ、内容の課題は残ります。反対に、本人が組み立て方を説明できるなら、大人の好みだけで表現を置き換える必要はありません。コメントを読むたびに手が止まる子には、直す作業を増やす前に、どう考えて書いたかを聞くところから始められます。
比べる相手を変えると、添削の評価も変わる
「友だちの感想では頼りない」と感じても、比較相手を見ずに効果を否定することはできません。Huisman(2019)は大学生の学術的な文章について、互いに改善の情報を返す相互評価をまとめています。読み合う活動を取り入れる際の参考にはなりますが、そのまま小学生の標準的な方法とはいえません。
Huisman(2019)では、相互評価の効果は情報を返さない条件との比較でg = 0.91 [0.41, 1.42]、自己評価との比較でg = 0.33 [0.01, 0.64]でした。教師からの情報との比較はg = 0.46 [-0.44, 1.36]で、明確な差を確認できませんでした。gも効果量の指標で、角括弧は推定の不確かさを表す信頼区間です。教師との比較では差がない値を区間に含んでおり、相互評価が教師より優れるとも、完全に同じ効果だとも断定できません。
| 添削への期待 | 書き直しの研究結果 | 返した情報の違い | 書き手の対象 |
|---|---|---|---|
| 大人の添削があればよい | 大人からの情報で作文の質が改善した(Graham(2015)) | 直しの情報がない条件 | 海外の小学生から中学生相当 |
| 友だちの読み合いには効果がない | 相互評価で文章の改善が見られた(Huisman(2019)) | 情報がない条件、自己評価 | 海外の大学生 |
| 相互評価は教師の添削を超える | 教師との明確な差は確認できなかった(Huisman(2019)) | 教師からの情報 | 海外の大学生 |
| 点数も返すほど役立つ | 詳しい記述だけが最も有効だった(Lipnevich(2009)) | 点数やほめ言葉を伴う条件など | 海外の大学生 |
この表の違いは、矛盾というより、何に情報を足したのかの違いです。何も返ってこない場合との比較で役立っても、別の丁寧な支援を受けている場合に同じ差が出るとは限りません。家庭で読み合うなら、友だちに入試の採点者を任せるより、「理由が伝わった場所」と「説明を足してほしい場所」を示してもらう使い方が考えられます。相手の反応に強く緊張する子には、無理に友だちの前で読ませず、本人が話しやすい大人と確かめる方法もあります。
コメントは量より、次の作業がわかるか
赤字が多い原稿は、よく見てもらったという安心につながるかもしれません。けれども「よく考えた」「説明不足」「表現に注意」が並ぶだけでは、本人が使える情報になっているかはわかりません。添削の量と、書き直しに必要な情報の量は同じではありません。コメントを受け取った後に子どもが何を選び、どこを変えられたかを見て確かめることが必要です。
Wisniewski(2020)のメタ分析では、教育上のフィードバック全体の効果はd = 0.48でした。ただし結果のばらつきが大きく、効果は返す情報の中身によって強く左右され、意欲や行動より知識・技能の成果で大きい傾向がありました。対象は作文に限らない海外を含む学習者で、年齢や学習期間もさまざまです。したがって、この平均から、作文を見てもらえば書く意欲まで同じように高まるとは推定できません。
家庭でコメントを具体化するなら、「説明不足」を「この経験から、その意見を持った理由をもう少し知りたい」と言い換える方法があります。これは採点基準を代わりに作るのではなく、読み手がどこで理解できなくなったかを伝えるための例です。子どもが口頭で説明できたら、その説明をどこに置くと読みやすいかを本人と考えます。大人が完成文を書き込む前に、本人が言いたかったことを確かめる余地を残します。
Hattie(2007)の総説も、フィードバックは種類と伝え方によって、学習にプラスにもマイナスにもなり得ると整理しています。海外の幅広い教育研究を論じたもので、適性検査の作文向けに最適なコメント量を決めた研究ではありません。この整理を踏まえると、コメントを受け止めきれず手が止まる場合は、返す内容の絞り方を検討できます。内容のつながりを確かめる日と表記を確認する作業を分けるなど、本人が次の作業を説明できる範囲から試すのが家庭での工夫になります。
点数・ほめ言葉・誤字直しが助けにならない条件
励ますつもりで点数やほめ言葉を添えることにも、条件つきの注意点があります。Lipnevich(2009)の海外の大学生を対象とした論述課題の実験では、詳しい記述を返す条件に、仮の成績やほめ言葉の有無を組み合わせて比べました。全体として仮の成績を受け取ると成績の伸びを妨げる傾向があり、詳しい記述だけを返す方法が最も有効でした。ただし、成績を伴う場合にほめ言葉が悪影響を和らげる面もあり、ほめる行為を一律に否定する結果ではありません。
Lipnevich(2023)も、海外の大学生が下書きを書き、情報を受け取って書き直す課題を調べています。詳しいコメントだけの条件は対照条件より意欲と文章の改善で優れていましたが、詳しいコメントにほめ言葉を足した条件は、足さない条件より意欲も改善も小さくなりました。これは下書きから修正までの課題内の結果で、親子の日常会話を長期間調べたものではありません。作文の修正時には、安心させる言葉が、直す必要がないという受け取り方につながっていないかを見ておく余地があります。
表記だけを整える添削にも、成果の範囲を分ける必要があります。Scherer(2024)のメタ分析では、誤字や文法など表面的な特徴への情報が、外国語学習者の内容面にg = -0.23という不利な効果を持つ可能性が示されました。対象は母語・第二言語・外国語の書き手を含む海外の研究で、この数値は外国語学習の条件に限った結果です。日本語を母語とする小学生が誤字を直すと内容が悪化する、という意味ではありません。
これらから家庭で警戒したいのは、点数を見て終わる、ほめられた箇所だけを残す、文字の訂正だけで修正済みと考える、といった受け取り方です。点数に強く反応する子や、間違いの多さで書くこと自体がつらくなる子には、点数と修正の相談を分ける方法があります。誤字の確認を省くのではなく、伝えたい内容を検討する時間が残っているかも確かめます。
家庭では、直した理由が残る流れを試す
家庭でできるのは、研究の平均値どおりに伸ばすことではなく、返した情報が本人の作業につながったかを観察することです。まず、添削前の文章を残し、課題で求められたことと、本人が伝えたいことを確かめます。次に、読み手が理解できた場所と、つながりを確かめたい場所を示します。以下は、研究で効果が確定した家庭用プログラムではなく、添削の受け取り方を見るためのチェックリストです。
たとえば理由を補ったなら、文章が長くなったかだけでなく、意見との関係が読み手にわかるようになったかを見ます。誤字を直したなら、内容まで良くなったとまとめず、表記の改善として記録します。本人が大人と違う表現を選んでも、意味が通り、課題に合っていれば、その選択の理由を聞くことができます。添削者の好みに文章を近づけることと、読み手に伝える力を育てることは区別しておきます。
書き直しが進まないときは、努力不足と決めず、コメントの言葉が難しかったのか、内容を考える材料が足りなかったのかを切り分けます。口頭なら説明できるのに書く負担が強い場合には、全文を書き直す前に、変更する部分を話して確かめる方法もあります。家庭で判断しにくい負担が続くなら、原稿と本人の説明を学校の先生に見てもらうと、困っている場所を共有しやすくなります。文章の仕上がりだけでなく、直し方を理解できたかが、次に支援を変える手がかりになります。
よくある質問
保護者が作文に詳しくなくても見られますか
採点を引き受けることと、読み手として反応を返すことは分けられます。「この理由はわかった」「この出来事と意見のつながりを聞きたい」と、理解できた場所を具体的に伝える役割は考えられます。ただし、家庭で決めた基準を実際の入試の採点基準として扱わないようにします。評価の判断に迷うときは、課題と原稿を添えて学校の先生などに相談し、家庭では本人の説明を聞く範囲から始められます。
ほめずに直すところだけ伝えた方がよいのでしょうか
研究は、子どもへの励まし全般をやめるよう求めていません。Lipnevich(2023)が調べたのは、大学生の文章修正で詳しいコメントにほめ言葉を追加した条件です。家庭では「よくできた」で話を終えるより、「この具体例で理由が伝わった」と、文章のどの働きが良かったかを伝える方法が考えられます。ただし、この言い換え自体の効果を同研究が検証したわけではなく、本人の受け止め方を確かめる必要があります。
書き直した作文が良くなれば、添削は成功ですか
その原稿の改善は手がかりですが、次の題材でも使える力がついたかは別に確かめる必要があります。大人の文を写して整ったのか、自分で理由を補って整ったのかでは、確認したいことが違います。修正の前後を見ながら本人に変更理由を聞き、別の作文で同じ観点を思い出せるかを見ます。すぐにできなくても、今回の研究だけから上達していないと断定せず、必要な説明や負担の大きさを見直します。
この記事の限界
作文のフィードバック研究には米国・欧州など海外の教育が多く、大学生や外国語学習者の結果も含まれます。文章の種類・比較相手・期間・尺度が異なり、修正課題内の改善と長期の定着は区別する必要があり、日本の適性検査に備える小中学生への効果は直接検証されていません。
書く苦痛や、口頭では説明できても文章にする負担が続く場合は学校の先生や読み書きの支援に詳しい専門家との相談が必要です。返されたコメントから本人が直す箇所と理由を選び、修正前後の文を並べて、意図した内容が読み手に伝わるか確かめてください。
参考文献
- Graham. Formative assessment and writing. The Elementary School Journal. 2015;115(4):523-547.
- Graham. A meta-analysis of writing treatments for students in grades 6–12. Journal of Educational Psychology. 2023;115(7):1004-1027.
- Wisniewski. The power of feedback revisited: A meta-analysis of educational feedback research. Frontiers in Psychology. 2020;10:3087.
- Huisman. The impact of formative peer feedback on higher education students’ academic writing: A meta-analysis. Assessment & Evaluation in Higher Education. 2019;44(6):863-880.
- Hattie. The power of feedback. Review of Educational Research. 2007;77(1):81-112.
- Lipnevich. Effects of differential feedback on students’ examination performance. Journal of Experimental Psychology: Applied. 2009;15(4):319-333.
- Lipnevich. Anchored in praise? Potential manifestation of the anchoring bias in feedback reception. Assessment in Education: Principles, Policy & Practice. 2023;30(1):4-17.
- Scherer. How effective is feedback for L1, L2, and FL learners’ writing? A meta-analysis. Learning and Instruction. 2024;93:101961.
配点表を読み終えたら、次は自分の答案を一文ずつ見直す番です。
- 向く人: 都立推薦の作文や適性検査の作文を、一文ずつ大人に直してもらいたい中学生と小学生
- 向く人: 内申と当日点の仕組みを読んだうえで、残りの月日に何を積むかを親子で決めたい人
- 向かない人: 立川駅の近くで、学校帰りに歩いて寄れる教室を探している人
- 向かない人: 答案を直されるより、大人数の教室で競い合うほうが力の出る子
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よくある質問
保護者が作文に詳しくなくても見られますか
採点を引き受けることと、読み手として反応を返すことは分けられます。「この理由はわかった」「この出来事と意見のつながりを聞きたい」と、理解できた場所を具体的に伝える役割は考えられます。ただし、家庭で決めた基準を実際の入試の採点基準として扱わないようにします。評価の判断に迷うときは、課題と原稿を添えて学校の先生などに相談し、家庭では本人の説明を聞く範囲から始められます。
ほめずに直すところだけ伝えた方がよいのでしょうか
研究は、子どもへの励まし全般をやめるよう求めていません。Lipnevich(2023)が調べたのは、大学生の文章修正で詳しいコメントにほめ言葉を追加した条件です。家庭では「よくできた」で話を終えるより、「この具体例で理由が伝わった」と、文章のどの働きが良かったかを伝える方法が考えられます。ただし、この言い換え自体の効果を同研究が検証したわけではなく、本人の受け止め方を確かめる必要があります。
書き直した作文が良くなれば、添削は成功ですか
その原稿の改善は手がかりですが、次の題材でも使える力がついたかは別に確かめる必要があります。大人の文を写して整ったのか、自分で理由を補って整ったのかでは、確認したいことが違います。修正の前後を見ながら本人に変更理由を聞き、別の作文で同じ観点を思い出せるかを見ます。すぐにできなくても、今回の研究だけから上達していないと断定せず、必要な説明や負担の大きさを見直します。